中国の現代芸術家アイ・ウェイウェイ展 at 英ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ

coca-cola
イギリスのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催されているアイ・ウェイウェイ展に行ってきました。特にここ数年、世界的な注目を集めいているアイ・ウェイウェイの作品が一気に見られるとあって、非常に多くの人で賑わっていました。

中国の前衛芸術家アイ・ウェイウェイ (Ai Weiwei)

まずは、アイ・ウェイウェイ (Ai Weiwei、艾 未未)を知らない人のために簡単におさらいをしましょう。この名前を知らない人はそもそもこのページにたどり着かないというツッコミはなしでお願いします。

アイ・ウェイウェイは中国出身の現代アーティストで、今や21世紀を代表する作家といっても良いでしょう。

政治的に議論を呼ぶ作品を数多く作っていることもあり、何かと中国政府に目をつけられています。しかも、有名な詩人でもあったお父さんと親子二代で。

日本でも、北京オリンピックの競技場、いわゆる「鳥の巣」のデザイナーとして少し話題になったことはありましたが、その後はそれほど注目されていないようです。一方、ヨーロッパでは今一番ホットな現代アーティストの1人と言っても過言ではありません。

今回、同氏をフィーチャーしたものとしてはかなり大規模な企画展がイギリスのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(王立芸術院)で開催されました。

本企画は、中国の習近平国家主席の訪英と重なることや、アイ氏が本企画のために申請したイギリスへの長期滞在ビザが発行されないといったこと(その後ビザは無事降りました)がニュースになるなど、開催前から非常に多くの注目を集めていました。

ロンドン、王立芸術院の展示

そんなアイ・ウェイウェイの企画展ですが、これまでなかなか行く機会を見つけられませんでしたが、今回ようやく時間ができました。

先ほども書いた通り、アイ・ウェイウェイの作品は、政治的なメッセージを具象化したものが多いので、背景や意図を理解しないとあまり楽しむことができません。

ここでは、展示されていた作品の中から代表的なものを解説を加えながら紹介していきます。

Straight

straight

これは2008年に四川で起きた大地震をテーマにした作品です。この災害では、20余りの学校が倒壊し、多くの子供の命が失われました。

アイ氏は、当局が公表しない被害者の情報を集める中で、多くの犠牲の原因の一つが、強度を犠牲にしたお粗末な建築にあることを明らかにしました。

この作品では、地震で倒壊した建物に使用されていた鉄筋を取り出し、それを一本一本手作業で伸ばしたものを積み重ねています。合計150トンもの鉄筋が地震で亡くなった子供を弔うとともに、そのまっすぐ伸びた形状にアーティストの強い思いがあらわれているようです。

 Souvenir from Shanghai

souvenir from shanghai
アイ氏は2010年に上海に新しいスタジオを作りました。しかし、事前の許可を得ていないという理由で、完成後すぐに当局から撤去の命令がくだされます(どんだけ意地悪、、、)。

この「上海からのおみやげ (Souvenir from Shanghai)」は、当局の対応に対するささやかな抵抗として、実際にスタジオに使われていた材料(レンガや角材)を用いて作品として仕上げたものです。

He Xie

he xie
ちょっとグロテスクですらある大量の川ガニの模型です。この川ガニには、さきほど紹介した上海のスタジオに関わるこんな話があります。

アイ氏は、上海スタジオの完成とその即時撤去を記念した昼食会を開きました。

この昼食会で供されたのが川ガニです。中国語で川ガニを意味するHe Xieは、政府のプロパガンダとして使用される「調和」を意味する単語と同じ発音なのですが、この言葉は最近ではインターネットスラングで「検閲」を意味する言葉になっています。

ちなみに、この昼食会にはアイ氏のサポーター約800人が参加したそうですが、肝心のご本人は自宅軟禁のため参加できなかったようです、、、

Dropping a Han Dynasty Urn

dropping urn

漢王朝時代の壺を落とす様子を写した3枚の写真で構成されるこの作品は、アイ・ウェイウェイの作品で最も有名なものの一つだと思います。

今回初めて気が付きましたが、西村賢太がモデルを務めているのですね(大嘘)。

アイ・ウェイウェイは一時期壺を扱った作品に凝っていたのですが、この作品は、記事の一番最初に載せたCoca-colaの壺の作品と同様に、歴史的な芸術作品の権威主義に反発するメッセージが込められています。

Ton of Tea

乾燥させたお茶の葉をぎゅーと固めて、1mx1mx1mの立方体にした作品です。

もちろん鼻を近づけるとふわっとお茶の香りがします。来場者の多くがこのかたまりに鼻を近づけていました。

白く見えるのは、、、、、、かび?

 

tons of tea

Golden Age

golden age

アイ氏は2011年4月に中国当局によって北京空港に捕まり、約3ヶ月間勾留されています。

この時の様子が模型になって展示されている部屋があるのですが、この部屋全体の壁紙が、Golden Ageという名の作品になっています。このタイトルも凄い皮肉ですね。

この壁紙は、ツイッターのロゴマークが監視カメラで囲まれ、さらにその周囲には手錠が配置されたデザインになっています。アイ氏のSNSに対する希望と政府による監視をモチーフにした作品です。

ちなみに、このツイッターの小鳥をよく見てみると、そこにはアイ氏の顔が写り込んでいます(なぜかちょっと笑ってしまう)。

ai weiwei face

図録もさすがのボリューム

catalog aiweiwei

展示会場を出ると、もちろんありました。アーティストショップ。とりあえず、図録だけ購入。

237ページという大ボリュームとは言え、そのお値段はなんと£48(約8000円)。なかなかの強気です。

アイ・ウェイウェイの略歴、インタビューや、今回の展示全てに加え、鳥の巣やひまわりの種といったこれまでの代表作も掲載されています。

今回の展示の制作過程の写真が多数載っているのはとても楽しめましたが、展示に関する解説があまり充実していないのが少し残念でした。

アイ・ウェイェイ人気の秘密

今回の展示のチケットは、オーディオガイド付きで£16(約3000円)と、かなり強気の設定ですが、会場は平日にもかかわらず多くの人で賑わっていました。会場のスタッフが入場者と話をしているのが耳に入ったのですが、今回のアイ・ウェイウェイ展はここ最近で最も人気のある企画なんだだそうです。

僕が思うに、彼がここまで人気なのにはいくつか理由があります。

まずは、メッセージや主題が非常に分かりやすいので、アートを学んでいない僕のような層にもとっつきやすということが挙げられます。オーディオガイドや図録には、彼が作品にこめた思いがとてもわかり易く説明されています。

得体のしれない中国という国の現代アートが、これだけ分かりやすい(少なくとも分かりやいように感じる)というのは、なかなか珍しいんじゃないかと思います。

また、イギリスの人にとっては、中国という国に対する漠然とした興味も、今回の展示会の人気を後押ししているように思います。

やっぱり、なんだかんだでみんな中国のことが気になるんだと思います。

個人的には、作品単体ではなく、あくまでも文脈を理解した上で楽しむものが多いという点で、改めて彼の作品が極めて王道の現代アートだという感想を持ちました。