大人の部活「宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた」【ブックレビュー】

宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた: 実録なつのロケット団 (学研科学選書)

今回の記事では、あさりよしとおさんによる「学研科学選書 宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた 実録なつのロケット団」について紹介します。

いい年をしたおじさんたちが集まって、ワイワイガヤガヤと有人宇宙飛行を目指したロケット開発をしている様子をえがいた胸の熱くなるノンフィクションです。

ホリエモンがなんでこんなに夢中になるのか

この本は、2013年の夏に学研プラスから発売が開始された本です。この記事を書いている時点で新刊本ではありません。

今更この本を紹介しようと思ったのは、最近YouTubeに投稿されたひとつの動画がきっかけです。

その動画というのは、堀江貴文さん(俗に言うホリエモン)によって投稿された「Technologies for suborbital rocket by Interstellar Technologies Inc.(Intestellar Technologies社による弾道飛行ロケット用のテクノロジー)」です。

堀江さんが安価な民間ロケット打ち上げに取り組んでいるのは結構よく知られている話だと思います。この動画では、その取り組みに関して、これまでの実験の様子や試験ロケットに搭載したカメラの映像などで構成されています。

たった1分半の映像ですが、言葉には表せないかっこよさです。

先日、この動画を見て思い出したのが、昔読んだ「宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた」というわけです。

というのも、同書はまさにこの動画にあるロケット開発について書かれたものだからです。

作者は「まんがサイエンス」のあさりよしとおさん

さて、前置きはこのくらいにして、本の紹介に移ります。著者のあさりよしとおさんは、「まんがサイエンス」シリーズでよく知られる漫画家です。

彼がどれだけ宇宙が好きなのかは、宇宙やロケットが「まんがサイエンス」の主要なテーマの一つになっていることや、それ以外にも宇宙を題材にした作品をいくつも発表していることから容易に推測できます。

この本は、そんなあさりさんが仲間と共に「なつのロケット団」というグループを結成し、ロケットを開発をする様子をえがいたドキュメンタリーになっています。

ちなみに、堀江さんは途中からこの「なつのロケット団」に加わっています。当初はパトロンとして、そして途中からは主要メンバーの一人として活動しているようです。

関連記事:あさりよしとお『まんがサイエンス』は全ての小学生に読んでほしい(無料お試し版有)

ロケット開発の道のりは失敗ばかり

彼らのロケット開発がユニークなのは、徹底したコスト削減に取り組んでいることです。

宇宙事業はお金がかかります。例えば、NASAのディスカバリー計画(太陽系探査)は、出来る限り安価に探査機を打ち上げることを特徴としていますが、一つのミッションの予算は5億ドルです。

太陽系探査と「なつのロケット団」の弾道飛行ロケットでは、予算規模が全く違うのは当然ですが、宇宙に関するプロジェクトには莫大な費用がかかることが当たり前と考えられてる中、「なつのロケット団」は、あくまでも安価なロケットにこだわっています。

そのために、できるかぎりホームセンターで買えるような汎用品を使用してロケットを作ろうとしています。

当たり前の話かもしれませんが、開発は失敗ばかりです。この本ではそれがしっかりえがかれています。工学部の末席を汚した人間から言わせると、失敗の記録をきちんと残しておくっていうのは本当に重要なんです。

液体酸素が供給できない、点火されない、炎が安定しない、部品がぶっ飛ぶ、様々な失敗を重ねている描写が続きます。

それでも、試行錯誤しながらちょっとずつ前進していくわけですが、こちらまで今度の実験はうまくいくのだろうかと、ドキドキしながら一気に読んでしまいました。

 大人の部活動。超楽しそう!

この本では、合宿先での料理の話など、ロケット開発自体には直接関係ないことも書かれています。これらのパートが、箸休めのような役割を果たすとともに、かえってリアリティを増しています。

また、堀江さんが収監されることが決まった際のメンバーの反応など、少年ジャンプ顔負けの友情物語を楽しむこともできます。

ところどころ挟まれる解説の図も、さすが漫画家によるクオリティです。

でも、この本の何より魅力は、彼らが実際に取り組んでいる「ロケット開発」という素材自身の面白さです。

彼らの多くが素人ながらも、一杯勉強して、大人ならではの知恵、そしてお金を使って目一杯遊んでいる様子が、とても楽しそうに伝わってきます。

正直、うらやましい。

この本の感想を一言でいうなら「嫉妬」に集約されます。

この物語はもちろんまだ完結しておらず、彼らはロケット開発を続けています。

冒頭で紹介した動画を見る限り、この本が出版された後も開発は着実に進んでおり、いよいよ来年、弾道飛行ロケットで小型衛星を打ち上げるようです。